IT企業の人事部門の方やIT系研修機関の方は既にご存知のように、来年の春から情報処理技術者試験制度が大きく変わります。
昨年12月25日にIPA(独立法人 情報処理推進機構)のJITEC(情報処理技術者試験センター)における新試験制度審議委員会から報告書が出されています。
今年の2月1日の東京での説明会を最初に、全国で説明会が開催されています。
今回の改革による新試験制度の特徴は、次の7項目です。。
(1) 共通キャリア・スキルフレームワークに準拠したレベル判定ツール化
(2) ITパスポート試験(レベル1)を創設
(3) 「情報システム」のベンダ側人材とユーザ側人材の一体化
(4) 「組込みシステム」の重要性の高まりに対応
(5) 硬度試験を11区分から9区分に整理、統合
(6) 最新の技術動向を反映した出題範囲の抜本的見直し
(7) 受験者の利便性の向上
詳しい説明は、「情報処理技術者試験 新試験制度の手引」-高度IT人材への道標-をご参照下さい。
この中で、私が関心を持っているのは次の3項目です。
a ITストラテジスト試験の創設
b ITパスポート試験の創設
c 共通キャリア・スキルフレームワーク
ITストラテジスト試験とは、従来のシステムアナリスト試験と上級システムアドミニストレータ試験を統合して創設される試験です。
システムアナリストが主にベンダ側、上級システムアドミニストレータが主にユーザ側の人材を意識していたのに対して、今回の改革で一体化が図られたということでしょう。
試験範囲としては、単に両者を統合したのではなく、事業戦略の立案など「超上流」の更に上流工程にまで拡がっています。
近年のシステムアナリスト試験でも、午後Ⅰで全く「情報システム」が登場しない問題も出題されていますが、更にその傾向が強まったと言えます。
ただし、難易度については、従来のシステムアナリストの問題がITSSのレベル5を想定して出題されていましたが、ITストラテジスト試験ではレベル4相当の試験にするとのことです。「手引」では、取り上げる題材の複雑性や規模を小さくすることなどで相対的な難易度を若干下げると説明しています。
私の感想では、試験範囲が経営とITの両方を幅広く問うようになったことと合わせて、総合的な難易度は変わらないのだろうと思います。
ITストラテジスト試験は2009年の秋から始まりますが、初回の受験者数はかなり多くなるのではないでしょうか?
私が所属する日本システムアナリスト協会の関東支部では、例会に出席した正会員(すなわち、システムアナリスト試験合格者)でITストラテジスト試験の受験を予定している人が結構いました。
上級システムアドミニストレータ試験の合格者も同様な状況だとすると、初回試験は旧制度の試験合格者も受験するので、受験者数が多くなると考えられます。
最近、企業情報システム導入の成否の鍵を握るものとして、「超上流」工程が重視されてきています。
昨年、ソフトウェアライフサイクルプロセスの日本版として、共通フレーム2007(SLCP-JCF2007)が発表されました。
これは、共通フレーム98(SLCP-JCF98)の改訂版ですが、システム開発の周辺プロセスが大幅に追加されています。
特に、企画プロセスや要件定義プロセスなど、超上流工程が加わったことが特徴的だと思います。
米国では、プロジェクトマネジメントのブームに続いて、ビジネスアナリシスが話題になっています。
IIBA(International Institute of Business Analysis)はBusiness Analysisに関する基礎知識体系として、BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)を発表しています。
このエントリを執筆時点でバージョンは1.6ですが、近いうちに2.0が発表されるといううわさがあります。
認定制度としてCBAP(Certified Business Analysis Professional)というものがあり、プロジェクトマネジメントにおけるPMPのように受験者数が増えているそうです。
ビジネスアナリスト(Bussiness Analyst)の人材像としては、ITストラテジストのそれとかぶってくるものがあります。現行試験で言うと外部コンサルタント的なシステムアナリストよりも、企業内の存在としての上級シスアドの方が近いような気がします。
あなたは、ITストラテジスト、ビジネスアナリスト、どちらを名乗ってみたいですか?