掲載誌 | 無料メールマガジン「IT情報ネットワーク」 72号(神奈川県中小企業団体中央会) |
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掲載年月 | 2006年2月9日 | |
執筆者 | (株)アイドゥ 代表取締役 井上きよみ |
改めてIP電話について概観してみよう。
IP電話を一口で言えば、インターネットを利用した電話、ということができる。専門的には、インターネットの主要プロトコルであるIPを活用するVoIP(Voice over IP)という音声通信技術を使って通話する電話のことだ。
インターネットを利用するということからもわかるように、IP電話の最大のメリットはその通信コストの圧倒的な低さである。登場した頃から現在に至るまで、通信費の削減策としての注目度は変わらない。同じタイプのIP電話ユーザ同士なら、通話料が無料という場合もある。
この低コストの理由は、IP電話でやり取りされる音声通話そのものが、メールなどと同じデータとして扱われ、インターネット上を行き来するからだ。もちろん、音声をインターネットで扱えるようなデータに変換するための仕掛けは必要になるが、一度そのようなデータになってしまえば見掛けはメールなどと変わらないため、電話だからといって特別に課金されることもない。サービスを提供する側から見れば、固定電話や携帯電話のように高価な交換機などの設備投資は必要なく、従来の電話に比べ徹底したコスト削減が図ることができるのも、格安料金を実現している根底にある。
このようなIP電話のメリットが一般消費者に浸透してきたことを反映するように、IP電話のユーザ数は年々増えてきている。
総務省が発表した報道資料「平成16年度末の電気通信事業契約数等の状況(速報)」によれば、一般の固定電話の加入数が対前年度比0.1%増とほぼ横ばいなのに対し、IP電話の利用数は830万件、対前年度比57.2%増という驚異的な伸び率を記録している。携帯電話は対前年度比6.7%増と増加率はこのところ鈍化しており、ISDN回線に至っては、対前年度比7.5%の減少である。
加入電話の5,163万件、携帯電話の8,700万件と比較すると、IP電話の830万件は一桁低いが、その伸び率を考えると如何にすごいかがお分りいただけるだろう。特に、個人向けのIP電話について言えば、IP電話の草分けでもあるソフトバンクBB株式会社が提供するYahoo!BB Phoneのユーザー数が、2005年5月末で458万人を超えてきており、IP電話普及の強力な牽引車となっている。当然、他の事業者もこれに追随してきていることは確かだ。
もっとも、このIP電話も良いことづくめではない。インターネットが社会インフラとして機能するようになってから10年。それ以降に登場した技術だから、固定電話に比べればまだまだ不備な点も多いことは確かだ。
例えば、以前は次のようなデメリットが指摘されていた。
(1)IP電話をかけられる相手が制限される
(2)110番や119番、0120などにかけられない
(3)IP電話のセキュリティ問題
(1)については、最近では携帯電話にもかけられるようになっており、もちろん、固定電話、プロバイダが異なる相手とも通話が可能である。さらに、同じプロバイダのサービスを受けていたり、同じタイプ同士のIP電話なら通話料は無料だ。
(2)については、FTTH(光ケーブル)を使ったサービスならば、110番や119番への通報ができるようになっている(ナビダイヤル0570、テレゴング0180等は不可)。FTTHを使えば、「03」「06」といった一般の固定電話と同じ番号を割り当ててもらうことも可能だ。
(3)のセキュリティについては、例えば、パケットキャプチャすることで盗聴を行うことができてしまう。この場合、通話内容だけではなく発信者や受信者の電話番号なども盗聴でき、なりすましなどの偽装電話の危険性も出てくる。これに対しては、IP電話の各種パケットの暗号化を標準化する動きが活発化している。標準化については道半ばという感じだが、電話機に独自の盗聴防止機能を搭載しているメーカーもあり、決しておざなりにはなっていない。
もちろん、上記以外にも問題点がないわけではないが、導入実績の拡大と共に急速に改善あるは解決の方向に向かっているといっていい。
これからのIP電話は、単なる通信コストの削減用アイテムではなく、音声とデータが統合された新たな通信コミュニケーションの手段として発展して行くことになることは間違いない。
(参考リンク)
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