掲載誌 | 無料メールマガジン「IT情報ネットワーク」 72号(神奈川県中小企業団体中央会) |
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掲載年月 | 2005年7月15日 | |
執筆者 | (株)アイドゥ 代表取締役 井上きよみ (&スタッフ) |
そもそもブログとは何なのか。「ウェブログ」、つまりウェブ上に残す個人的なログ(日記)の略称だと言うのが一般的な説明である。米国では、同時多発テロの際に既存メディアを越えるスピードと正確さを持ったメディアとして注目を浴び、その後個人による情報発信ツールとして使われ続けている。
それが日本に入ってきたのが、2003年末と言うわけだ。 その後、上述したように爆発的に国内でも普及を遂げたわけだが、その要因として四つほど特長を挙げることができる。以下、それらについて簡単に述べていく。
まず、第一にその使いやすさが挙げられる。通常ウェブサイトを更新する場合、HTMLの知識を駆使してテキストファイルを書き換える、あるいは専用のアプリケーションの力を借りる必要があった。
ところが、ブログの場合、ブラウザ上で新規に追加したいコンテンツを書く、あるいは更新したいコンテンツを書き換えるだけで良い。専門的知識をほぼ必要としない特徴が、これだけの個人に支持されている最大の要因である。
これは、ブログをビジネスに生かす際にも最大限に活用できる。企業ウェブサイトをブログで構築してしまえば、更新の手間を圧倒的に軽くすることができる。
二つ目の特長に「コメント機能」がある。これは、今までもインターネットに存在していた「掲示板」機能に似たもので、それぞれのコンテンツに対する読者の感想などを直接書き込むことができる。
個人ブログの場合、この機能が新たなコミュニケーションの手段として活用され、人脈形成に結びついていった。しかしながら、中には誹謗中傷を書き込むために使われた事例もある。従って、ビジネスにブログを活用する場合、この機能を使うか否かについて慎重な判断が求められる。ただし、上手に活用すれば、顧客の生の声を直接収集する、絶好のツールとなる。
三つ目の特長は「トラックバック機能」と言われるものである。これは、「あなたの(御社の)コンテンツを参考にして私は(弊社は)コンテンツを書きました」と言うことを、参考元のブログに明示的に伝達する機能、と言うことができる。参考元のブログには、そのブログから派生した他ブログのコンテンツ一覧が並ぶと言うわけだ。この機能により、同じテーマを持つブログ同士を結びつけることが可能になっている。ビジネスに活用する場合の事例については、次項の「具体的活用事例」で紹介する。
最後の特長は「RSS生成機能」である。RSSとはReally Site Syndicationの略語であり、簡単に言えば、ブログの見出しのみを配信する機能とその規格を指す。配信されたRSSはRSSリーダーと呼ばれる専用のソフトウェアを使って読む。
見出しのみの配信なので、読者側は短時間で読みたいコンテンツを見つけ出し、必要なものだけを読むことができる。このRSSを活用したビジネスも、将来非常に有望であると筆者は考えている。
ブログをビジネスに生かす方法は、現在のところ大きく二つの潮流に分けられる。サイト更新の簡便さを生かし機動的なウェブサイト作りに活用する方法と、トラックバックなどユーザの意見を取り入れる機能を生かした、マーケティング・販促的な活用方法である。ここでは、両者の代表例、およびその中間的な企業ブログを紹介したい。
1.機動的なウェブサイト作りに活用する方法
これは、専門のウェブサイト担当者を配置できない中小企業において、非常に効果的なブログの活用方法である。更新履歴や新着情報など、今まで手動で更新していた項目なども、全てブログシステムが更新してくれるので、更新の手間を大幅に減らすことができる。さらに、デザイン一新の場合にも、CSSファイル(デザインを定義したファイル)の書き換えで済む。企業のウェブサイトを活発に見せかけるには、またとない方法だ。
ここでは、二社のブログによるウェブサイトを事例として紹介する。一社目は出版や映像関連のコンテンツ製作会社の株式会社スマートイメージ。一見したところ、とてもブログで構築されているようには見えない。しかし、5月8日付けのプレスリリースにあるように、このサイトはブログであり、非常にアクティブな更新が可能になった旨が書かれている。もう一社、免許インデックス有限会社のウェブも紹介しておこう。この会社はブログを生かし、たった一人で毎日膨大なコンテンツ更新を行っている。
2.マーケティング・販促に生かす方法
こちらの方法は、どちらかと言うと大企業が採用する事例が多い。ウェブサイト更新の手間を省く目的ではなく、顧客の声を如何に取り入れるかと言う点にターゲットを絞ってブログを活用しているからだ。その一例が、松下電器産業が展開した「Let's Note BLOG」。
同社の人気ノートPCシリーズであるLet's Noteのマーケティング・販促を目的とし、ブログと言う「新しい媒体」を使用することで注目を浴びることに成功。
さらに、コンテンツ中で「次のLet's Noteに望むこと」などの形で積極的に顧客からのトラックバックを受け付け、顧客の生の声を取り込むことにも成功している。同ブログは3月31日までの限定公開の予定だったが、予想以上の反響が得られたため第二期として6月30日までの期間限定公開を行っている。同様に、トラックバックやコメントを効果的に使い顧客の声を取り込むことに成功している例として、日産の小型自動車ティーダのブログも紹介しておく。
3.両者の中間的な企業ブログ
大企業が運営しているブログの中でも、ひときわ異色に見えるのが、ここで紹介する「ブラザー社員のブログ brotherhood」だ。
広い意味ではマーケティング活動に含めることもできるだろうが、製品に対する顧客の意見を取り込む目的をこのブログは前面に押し出していない。むしろ、多くの会社が不祥事を重ねる中で、自社への信頼感を維持するためには何をしたら良いのか、という観点から企業そのもののイメージ向上を狙っている感がある。ただ、社員全員の声を映し出すサイトの運営は困難極まりない。そこで、ブログの特性である「更新しやすさ」に目をつけたと言うわけだ。現在のところ寄せられている反響からは、確実に企業イメージの向上に貢献している感触を同社では得ているようだ。
このやり方であれば、中堅企業等でも企業イメージの向上や知名度向上の目的でブログを使うことが可能となるだろう。
以上、三種類の活用事例を挙げてきた。今年は、企業ブログ元年とも呼ばれている。ブログの特長の四番目に挙げたRSSを効果的に使った事例からも今後目が離せない。ビジネスへのブログ活用はようやくいま始まったところであり、これから本格的に活用される時代となることだろう。
(参考リンク)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 爆発的な可能性を秘める「ブログ」とは
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