掲載誌 | 有料メールマガジン「Scan Security Management(2006年度)」 |
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掲載年月 | 2006年05月9日 Vol.153 |
執筆者 | 株式会社アイドゥ 大沼孝次・井上きよみ |
情報セキュリティマメジメントシステム(以下、ISMS)の第三者認証制度は、国内独自制度として、(財)日本情報処理開発協会(以下JIPDEC)の「ISMS適合性評価制度」が2002年から本格運用されてきた。グローバル規格としては「BS7799-2」が有名だが、2005年10月に「ISO/IEC27001」が誕生し、いよいよISMSもISO化された。
JISQ27001が発行されるのも今月(2006年4月)だ。
実は日本独自規格だったISMSは、ISO化された規格への一本化にあたり、規格の中身だけでなく、制度そのものも大きく変わりつつある。
そこで、「ISMS審査員」は前編と後編の2回に分け、前編では資格そのものに重点を置き、後編ではISO27001審査員に向けた動きを解説する。
ISMS審査員とは、JIPDECの「ISMS適合性評価制度」により、評価の申請があった組織・企業を審査する資格である。これには経験等により3区分される。(区分以外の場所で「ISMS審査員」という場合、3つを含めている)どれも初回登録から3年ごとに更新しなければならない。
1.ISMS審査員補
主任審査員の始動・助言の下、補助者としての審査実務を行う。
[登録要件]
情報技術分野で4年以上、情報セキュリティ関連分野で2年以上の実務経験があるか、もしくはシステム監査等の資格に合格していることが前提となる。JIPDEC認定のISMS審査員研修コースを修了し、その試験の合格が必須。
[更新要件]
審査業務に関する教育研修を20時間以上受講。
2.ISMS審査員
審査実施計画を具体的な業務分担にまで詳細化し、実際に審査を行い、審査結果をまとめる。また、主任審査員の助言の下、審査チームリーダを担当できる。
[登録要件]
審査員補の要件に加え、3年以内に最低4回、延べ20日間の審査に参加と、主任審査員2名からの推薦。
[更新要件]
審査員補の要件に加え、直近の審査員登録有効期限内に最低3回以上の審査実施。
3.ISMS主任審査員
審査計画を立案し、審査チームの業務分担を明らかにする。また、審査チームリーダとして審査過程全般を統括し、自らの責任において審査報告書を作成・提出する。
[登録要件]
審査員の要件に加え、直近の2年以内に最低3回延べ15日間の審査チームリーダを務めている。
[更新要件]
審査員の要件に加え、直近の審査員登録有効期限内に最低3回以上の審査チームリーダとして審査を実施。
SMS審査員は、JIPDECが認定したいずれかの「審査登録機関」の審査員としてISMS審査に携わることができる。審査登録機関数は2006年4月1日時点で19。該当機関の社員ならずとも、外部スタッフとして登録することで、自営業者や別会社勤務者でも審査への参加の道は開ける。
ISMS適合性評価制度は当初、審査員を確保するため、「特別認定制度」として情報セキュリティ監査等の実績などを、審査実績の代替として用いることが可能な期間を設けていた。実際、現在の審査員・主任審査員の多くは、この特例を利用している。
審査員数は審査員補を含め、2006年4月時点で約3,300名に達している。一方で、ISMS認証取得事業者は1,500強と伸び悩み、審査に携わるチャンスは少ないと言っていい。もちろん審査員の中には、当資格によって、審査業務よりもISMSコンサルタントとしての仕事を増やせたという人もいるだろう。
しかし、今年に入り、最初の登録から3年が過ぎて更新を迎える審査員が増えてきたが、そのための要件をクリアできない者が後を絶たない。審査実務を課さない審査員補への登録替えをする者もいる。審査員の資格維持への苦しい実情が見え隠れしている。
<IT系企業勤務:シニアコンサルタント(49歳)>
>現在の仕事と資格取得のきっかけは?
>取得までの学習方法や期間は?
>資格取得後の活躍の舞台と今後の展望は?
>資格取得を目指している人へのメッセージを
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 情報セキュリティ監査・審査系資格の取得と効用■第2回■ ISO27001化されるISMSで審査員制度も揺れ動く?「ISMS審査員」(前編)
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