今ではすっかり多くなった企業のブログ。どちらかと言えば中小企業や個人が積極的に取り組むブログだが、マイクロソフト(以下、MS)もブログを使っている。今回、「日本のセキュリティチームのBlog」を運営するセキュリティレスポンスチーム(SRT)の奥天氏と小野寺氏の2名に話をうかがった。
>>「日本のセキュリティチームのBlog」
その内容を
第1回 セキュリティブログを始めた理由
第2回 セキュリティブログ運営のルール
第3回 セキュリティブログの対外的な影響
として連載する。
公式情報に付加価値を
―まずセキュリティブログをはじめたきっかけは何でしょうか?ブログを始めた目的をお教えください。
奥天氏:
MSでは、これまでも多くの手段で情報を発信してきました。ニュースレター、ウェブ、eラーニング、カンファレンス、セミナー等です。例えば、私の所属するSRTでもウイルス対策やセキュリティ更新プログラムの情報などを掲載していますが、ウェブは公式な情報を伝える時に使います。メールも公式ですがほしい人にしか情報を渡せないし、長さは短めになります。しかし、ブログはそれらとは違った可能性がありました。
小野寺氏:
ブログはメールの足りないところも書けるし、ウェブのようにオフィシャルなところでは書けないことも書けます。伝えたいけど他ではなかなか書きにくい情報を伝えられます。ブログは、公式でもない非公式でもない、その中間のパイプ役を担っています。
奥天氏:
具体的には、個人的な意見や経緯など、「こういう経緯で公開にいたりました」というものです。これは今までは表現できなかった中立的な意見です。公式な情報に、新たな付加価値を提供できるようになったのです。また、「ブログの文面から滲み出る顔」みたいなものをきっかけに、ユーザーがどこかにリンクしてくれるといったインタラクティブ性もありますね。
小野寺氏:
ウェブやメール以外での情報伝達の選択肢を増やす、という目的もありますね。実際「こういう情報をRSS(※)で流してくれればいいのに」というフィードバックをいただき、ブログ以外のセキュリティ情報をRSSで流せるようにしました。
※RSS...更新された際に記事概要が通知されるもの。
ユーザーとのコミュニケーションツール
―ブログ内でも「顔が見えない」という言葉が印象的でした。
小野寺氏:
セミナーでお会いした人から「MS社員は皆ロボットだと思っていた」と言われたことがあります。ですから、ブログで人間味ある文章を書く意味も大きいです。社員個人の顔がもっと見えるようになりますから。人間味のある文章→人間がいるらしいね→セミナーにいってみようかな→名前を知ったので話しかけてみようかなという流れも期待できます。ユーザーとのコミュニケーションを図れるのは大きいですね。
トップが情報発信を積極的に推進
―ところで、ブログには、「コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。」という注意書きがあります。更新にも慎重な姿勢がうかがえますね。開始にあたって苦労もされたのでは。
奥天氏:
実は、トップ層もブログの可能性については意識が高く、ユーザーへの情報発信を推奨していたので、会社としての後ろ盾は十分でした。ただ、情報漏洩の懸念もありました。必要以上に書きすぎてしまう他に、どこかを借りて運営するのはセキュリティ上のリスクが高かった。一元的に情報をまとめるためのブログシステムが必要だったのです。そこで、MSが管理する「eXperts Connection」(以下、eXConn)という電子コミュニティ内で運営することにしました。これで、セキュリティ面はeXConnを管理するチームに任せ、我々はコンテンツに集中できるようになりました。
>>「eXperts Connection」
現状の目的達成度は100点満点中50点
―約1年間の運営を通じての自己採点はいかがでしょうか。
奥天氏:
「ブログをやった」ということだけで言えば50点くらいです。課題がまだまだ山積みです。
アクセスしてくださるのはプロの方が多いように見受けられますし、巡回ポイントにしてもらえているわけでもない。今は「やっていますよ」ということが知られてきた状態なだけ。それに、頻繁に更新できているわけでもない。
企業の中でもITはよく知らないけどやらないといけない人や、もっと一般の方にも知ってもらいたいという思いがあります。
今回はマイクロソフトという大企業がブログを始めた目的についてをまとめた。次回は、ビジネスブログの立ち上げを200件以上企画・運営しているライトアップ社の白石社長も参加して、企業がブログを運営する際のポイントについて語る。
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