掲載誌 | 有料メールマガジン「Scan Security Management(2005年度)」 |
---|---|
掲載年月 | 2005年11月08日 Vol.130 |
執筆者 | 原田智子・井上きよみ(アイドゥ) |
IT業界のみならず多くの業界で、ネットワークの脅威からの保護やセキュリティポリシー浸透のために、鍛えられたセキュリティ技術者が必要とされている。
CompTIA(The Computing Technology Industry Association:コンプティア:コンピュータ技術産業協会)が認定する「Security+」は、さまざまな実務環境において、セキュリティの問題を分析・最適化するソリューションを取捨選択し、活用する能力を評価する資格である。
>> http://www.comptia.jp/cont_certif_10.html
CompTIAの認定資格 | |
出題形式など | 多岐選択式で、問題数は100問 |
試験所要時間 | 90分 |
受験料 | 28,140円 (※会員価格あり) |
試験会場 | アール・プロメトリック、ピアソンVUEの全国の認定試験センター (スポットでの臨時試験会場も可能) |
合格基準 | 100から900のスコア形式 764スコア以上 |
試験日程 | いつでも可能(上記認定試験センターでの可能日時) |
申し込み | 上記認定試験受付センター |
CompTIAは、1982年、米国シカゴにおいて設立され、技術標準の提言やIT業界内で作成された実務能力基準の認定活動などを行っている、非営利のIT業界組織だ。欧米を中心に14拠点を持ち、2005年7月現在で89カ国2万社以上の会員により活動が支えられている。日本支局が創立されたのは、2001年4月。
CompTIAの認定試験は、現在から将来にわたり世界的に必要とされている人材を効率的に輩出するために作成されている。人材像は、技術者としてニーズの高い職種において、共通して必須な“実務基盤”とされる技術知識・スキル・問題解決能力、業務に対する考え方を備えている人。各業務において、仕事として求められる能力を持っているかを確認するための認定資格だ。
CompTIA日本支局事務局次長マーケティングスペシャリスト板見谷剛史氏は「お客様のニーズを追うのがCompTIA、時代にあった製品を追うのがベンダー資格。顧客に接する上で必要な資格、つまり、顧客のIT環境を改善できる証明がCompTIAの認定である。」と言う。
ITにおけるセキュリティの重要性が認識され、セキュリティ技術者の需要が高まる中、新たな認定資格であるSecurity+が作られた。
試験委員は、Federal Bureau of Investigation(FBI)、IBM、マイクロソフト、モトローラ、ノベル、RSA Security、サン・マイクロシステムズ、シマンテック、ベリサインなど米国の組織で構成されている。
Security+の試験は、2002年12月に開始され、2003年12月には、日本語化された。2005年4月の時点で、世界中で1万3000人以上が認定されている。
板見谷氏は「CompTIA認定資格11分野(日本語9分野)全体の合格率は約40%。Security+は、セキュリティ分野を把握し安心してビジネスを任せることができるレベルであるか、環境改善や生産性の向上が可能であるかを問う試験で、職業として必要な能力を認定する資格。試験内容は、セキュリティに関して広く浅く、時に深い出題傾向となっていて、状況判断能力や生産性の高い解決方法を習得する必要性がある。」と語る。
日立電子サービス、シマンテック、NTT東日本-埼玉、日立情報システムズ、マカフィーなどの情報通信系企業やセキュリティベンダーが、社員研修にSecurity+を導入している。
<マカフィー:SE本部教育部若林勝広氏>
『当社教育部では、顧客への製品教育を中心に、社員に対する製品および専門的な教育の方向性を決定している。顧客サポートやセールスエンジニアなど、技術者として会社の前面に立って顧客をフォローアップする立場の社員全員に、Security+の集中教育を実施した。その理由は、セキュリティに関する知識を一定レベルで持ち、今後の中核となるセキュリティ製品に対する全社員の理解力を高めて良いサービスを提供する狙いだった。
また、習得した知識を確認するには、第三者機関の認定制度を活用することが最善であると判断し、この試験制度を採用した。Security+を社員一斉に合格させ社内に広めるため、インストラクタ資格をもつ専門の教育会社に依頼した。今後は、会社が認めた認定試験合格者には報奨金を出すようにしていく。』
<日立情報システムズ:プロジェクト推進本部生産技術教育センタ満丸美由紀氏>
『当社は顧客の最良ITパートナーとして、高い付加価値を創出できる人材の育成に取り組んでいる。教育部門では、専門的知識・技術の教育だけでなく、社員自らがグローバルスタンダード資格にチャレンジすることで、習得内容を客観的に評価するしくみも提供している。
セキュリティ技術者のみならず、IT系の全エンジニアが、セキュリティ技術・業務を習得し、顧客視点での具体的な提案に繋げていくことが重要だ。このため、2004年秋より、社内にてSecurity+をターゲットとしたセキュリティ技術者育成プロジェクトを開始。集合教育や自社開発したeラーニングを提供してスキルアップを支援している。』
<マカフィー:SE本部鈴木弘之氏>
『当資格取得までの勉強方法は、社内の研修会に参加して、問題の傾向をつかみ、その後は問題集を繰り返し解いていく方法だった。私は、情報セキュリティに関する仕事に携わってるが、合格には幅広い範囲の知識が必要で、毎日1~2時間、1ヶ月程度継続して勉強した。当社は、情報セキュリティ関連製品のメーカーなので、扱っている製品の知識に偏りがちで、企業全体のセキュリティを総合的に考えるという視点の知識が足りなかったと思える。Security+を取得してからは、企業の情報セキュリティをより広い視点で捉えることができ、顧客への提案活動にも役立っている。』
<日立情報システムズ:中国支社第2設計部第3グループ粟谷高徳氏>
『社内教育を利用して、2005年1月に当資格を取得した。社内のeラーニングと市販書籍で6時間程度勉強した。問題を反復して試み、内容の読解と傾向の把握、キーワードを記憶し、不明キーワードに関してはインターネットで調べた。現在の業務内容はネットワークSIなので、Security+合格以前も顧客から「情報セキュリティ対策」について相談を受けるケースが多くあった。
今回の資格取得によって、顧客への提案を行う根拠を得たと思っている。また、Security+はセキュリティの一般概念に関する部分が多いため、実務経験が大きなポイントであると考えている。今後は、積極的にセキュリティに係る仕事にチャレンジして行きたいと思う。顧客が置かれている状況をしっかり把握し、最適なソリューションを提供できればと考えている。
これからの課題や目標は、情報通信業界の今後の動向を積極的に取り入れていくことだ。合格の過程で得た知識や技術を仕事に繋げるために、いかに活用していくかを念頭にして、がんばっていきたい。』
NRIセキュアテクノロジーズから提供された類似問題から、試験内容を確認してみよう。
[問題1]Webサーバの管理者は、Webサーバに対するポートスキャンの兆候を発見しました。ポートスキャンによってWebサーバの脆弱性が露見しないように、サーバ管理者がとるべき行動はどれですか。
A.レジストリをリモートから参照できないように設定する
B.今後、使用する可能性があるため、すべてのサービスを起動しておく
C.TCPまたはUDPを使用するすべてのポートを閉じる
D.必要のないサービスやプログラムをアンインストールするか、または停止する
[問題2]従業員の信用照会を行う人物として、不適切な人物は誰ですか。
A.同僚
B.本人
C.クライアント
D.上司
[問題3]Webブラウザのセキュリティを高める最良の方法はどれですか。
A.新しいバージョンは多くのセキュリティホールを含む傾向にあるため、使用しない
B.未使用の機能をすべて無効にする
C.VPN経由のインターネットアクセスのみ行う
D.閲覧禁止サイトへのフィルタリングを行う
CompTIA認定資格には、「職業としてのIT」能力を問うため、以下の3つの特長がある。
Security+の出題内容と出題率は次の通りである。
内容 | 出題率 |
セキュリティの一般概念 | 30% |
コミュニケーションセキュリティ | 20% |
インフラストラクチャセキュリティ | 20 |
暗号技術の基本 | 15% |
業務・組織面でのセキュリティ | 15% |
CompTIAのトレーニングパートナーによる、オープンセミナーやWeb模擬テストも開催されている。
Security+は、世界的に通用するセキュリティの人材を育成するにふさわしい資格であろう。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 注目の情報セキュリティ資格、その取得と効用 第3回 即戦力であることの証明 CompTIA「Security+」
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.eyedo.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/50
コメントする