掲載誌 | 有料メールマガジン「Scan Security Management(2005年度)」 |
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掲載年月 | 2005年11月1日 Vol.129 |
執筆者 | 原田智子・井上きよみ(アイドゥ) |
本連載で紹介する唯一の国家資格が、今回の「情報セキュリティアドミニストレータ試験」となる。当試験は、経済産業省が管轄する「IPA(情報処理技術推進機構)」による情報処理技術者試験の一つで、組織における情報セキュリティ確保・管理の遂行者向け資格である。
情報セキュリティアドミニストレータ 試験概要 | |
出題形式と試験所要時間 |
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受験料 | 5,100円(税込み) |
試験会場 | 全国の試験会場 |
試験日程 | 年1回(10月第3日曜日) 次回は平成18年10月15日 |
申し込み | 7月中旬から約1か月間(予定) |
情報セキュリティ管理の現場責任者を対象者像とした、情報セキュリティアドミニストレータ試験は平成13年秋から実施されている。合格者は、基本知識のみならず、情報セキュリティを確保する施策に対し、計画・実施・分析・見直しができる技術水準を有していると評価される。
しかし、6回目の試験実施となる平成18年から、その位置づけは、以下のように大きく変更されることとなった。
H17まで・情報セキュリティアドミニストレータ試験主として情報システム利用者側が受験、ただし、情報システム開発側にも有用
↓
H18から・テクニカルエンジニア試験「情報セキュリティ」(新設)情報システム開発側の認定資格という位置づけ
・情報セキュリティアドミニストレータ試験
情報システム利用者側の認定資格という位置づけが明確に
情報セキュリティの重要性が高まる気運の中、日立ソフトウェアエンジニアリング、野村総合研究所、TIS*などのIT系企業にとどまらず、他業種、官公庁等にまで、受験者の裾野が拡がっている。
* 団体受験の多い主な企業(IPA調べ)
<日立情報システムズ:業務サポート本部人材開発部処遇・教育グループ岩田正幸 氏>
『当社は、「顧客満足重視の高品質経営の確立」を経営方針に掲げ、顧客にとって最良のITパートナーとして、顧客のご満足の最大化を目指している。当社にとって情報セキュリティの確保は、顧客システム構築において必須なだけでなく、事業運営上、最重要課題として位置付けており、その技術習得およびサービスの強化は第一である。
このような背景から、当試験を、情報セキュリティの技術力をはかる指標として位置づけ、セキュリティ分野の社員のみならず、全社員共通技術として幅広く取得への指導・支援を実施している。今後は、現行試験に加え、新設試験の取得も推進し、さらに高度なプロ集団を育成したい。』
<日立情報システムズ:プロジェクト推進本部生産技術教育センタ川本文彦 氏>
『私は情報処理技術者試験のネットワークスペシャリストを取得済みで、かつ、ファイアウォールの設定等、実機経験もあり、基礎的なスキルは身についていた。
試験準備として、まずは、午後の過去問題に目を通し、問題の傾向を把握。システム構成は、実機で経験していたので、イメージしやすかったが、反対に情報セキュリティマネジメントと法律は、自分に不足していた部分と気づいた。これらに関しては、常に本を携帯し、ちょっとした移動時間を見つけて読んだ。元々セキュリティには興味があり、日頃からインターネット(米国セキュリティ関連の翻訳版サイト)の記事を読むように心がけていたので、最新情報も得ていた。
結果、無事合格でき、資格取得後は、自信がついた。
また、周囲からも認知されるようになり、業務上では、技術者のセキュリティ教育の企画から実施まで担当するようになった。
さらに、自身のパスワード管理も厳格になった。
今後の課題は、所属が教育部署なので、技術者だけでなく営業員やスタッフにも業務で必要なセキュリティを啓蒙できるようになることだ。難しいことをわかりやすく教えることができたらと思っている。
目標は、セキュリティ技術に精通し続けること、プロ意識を持って仕事をしていくことである。』
<IT企業勤務:シニアコンサルタント山本康 氏>
『私は、毎年のように情報処理技術者試験を受験し、アプリケーションエンジニア、プロジェクトマネージャ、システム監査技術者、システムアナリストと合格してきた。次に選んだのが当試験で、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)審査員として、自分の専門領域として合格しておきたいというのが受験理由。
受験勉強を始めたのは、受験申し込み後から。既に情報処理の共通知識はあったので、専門分野の参考書を読むことと、過去問題集で午後の問題を解いてみるという方法で準備した。
実際に受験してみると、午前問題が意外に難しく感じたが、1回で合格できた。試験全体の難易度としては、小論文が無い分だけ他の高度区分よりは易しかったと感じている。それでもマネジメントと専門技術の両方の知識と経験が求められるので、情報処理技術者試験の中では難易度の高い方に入るのではないか。
今まで、どちらかと言えばゼネラリスト的な試験を取得してきたが、当試験の合格によって、自分の専門分野の一つに情報セキュリティが加わった。自分の発言の重みが増したように感じている。
今後は、上級システムアドミニストレータに合格して、テクニカルエンジニアを除く「高度区分」をすべて制覇しようと狙っている。
当試験の今後の傾向としては、来年創設の「情報セキュリティ」によって、テクニカルエンジニアとの違いが鮮明になり、マネジメントの視点が重視されるようになると思う。利用部門の情報化リーダーで、情報セキュリティのスキルを身につけたい人は、ぜひ挑戦してほしい。』
これまでに実施された情報セキュリティアドミニストレータ試験の応募者数ならびに合格率は、以下の通りだ。受験者数に対する合格率は毎年12%強で、難易度の高い試験であることがうかがえる。
平成13年 | 平成14年 | 平成15年 | 平成16年 | 平成17年 | |
応募者 | 23,778人 | 34,352人 | 42,417人 | 51,481人 | (約)42,113人 |
受験者 | 15,988人 | 22,235人 | 27,913人 | 33,581人 | |
合格者 | 2,111人 | 2,788人 | 3,149人 | 4,174人 | |
合格率 | 0.132% | 0.125% | 0.113% | 0.124% |
また、合格者の平均年齢は33歳程度で、社会人経験10年前後と思われる。ある程度の現場経験が合格への橋渡しになっているのではなかろうか。
セキュリティ技術者の需要がますます高まる中、国家資格の取得により個人
も企業もステータスアップが図れるに違いない。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 注目の情報セキュリティ資格、その取得と効用 第2回 国家資格で個人も企業もステータスアップを! 情報セキュリティアドミニストレータ試験
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