掲載誌 | 有料メールマガジン「Scan Security Management(2005年度)」 |
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掲載年月 | 2005年9月6日 Vol.121 |
執筆者 | 三原崇人・井上きよみ(アイドゥ) |
ブログには、いわゆる日記系と言われる、日常の出来事を書き綴ったものが多い。「今日は○○があった」という具合で、職場のことが記されているブログもよく目にする。その内容は、会社や組織にとって良いことばかりではなく、上司や組織に対する愚痴や悪口も容赦なく書かれている。だが、内部事情を書くには、注意が必要である。
最近、米国を中心にブログが原因で会社を解雇されるという報道が相次いでいる。有名所も然りで、最近話題になった企業を、いくつか挙げてみよう。
通常、会社と従業員の間には秘密保持契約が存在する。会社との雇用契約時にもしくは在職中に、「業務遂行上知り得た秘密を他に漏らしてはならない」などといった文言の盛り込まれた契約書を交わした覚えはないだろうか。 秘密の定義は、組織によって異なるが、一般的なものとして顧客データがあり、通常、社内情報も社外情報も含む。
もう一点注意すべきは、契約の有効期限である。在職中は当然のこと、契約書面に「退職後も機密を漏らしてはならない」などと記されていることが多い。退職してそことは縁が切れたから何でもあり、では決してない。契約に違反すれば、損害賠償を請求されてしまう可能性もある。
職場日記ブログの代表格は、社長ブログだろう。社長日記のパイオニア的な存在である、ライブドアの堀江貴文氏の「livedoor社長日記」をご存知だろうか。ブログ開設当初は、誰と会っただの、どこへ行っただのが頻繁に書かれていたように思う。今では仕事の内容を綴ったものが減ったように感じる。有名人になったから、というわけではなく、無闇に仕事のことを書くと株価に影響を与えかねないから、という思いを感じてしまうのは筆者だけだろうか。社長ブログではプロモーションを兼ねているが故に、こういったインサイダー情報面にも配慮を配る必要があるのだろう。
さて、社員であればどうか。社員の場合、自分の持つ情報が周囲にどういった影響があるかという意識がさほど高くないためか、ポロッと書いてしまうこともあり得るだろう。しかし、その内容が機密か否かを判断するのは、かなり難しいかもしれない。
それでは、不正競争防止法にある「営業秘密の保護」という観点から考えてみよう。ここで焦点となるのは以下の3つだ。
これら3つが「すべて」当てはまった場合に、不正競争防止法の「営業秘密の保護」に引っかかる。
ブログが原因で解雇される事例が増加する現状を受け、企業や組織は社内のブログユーザーに向けてきちんと方針を示すべきだという声が出ている。一方、個人の側でも予期せぬ事態への防衛策を講じるべきだという声も上がっている。 米国では電子フロンティア財団(EFF)という組織が、安全にブログするため(クビにならないため)の方針を発表している。
などである。これではつまらないブログにしかならないように思うが、確かに安全である。
現在のところ、ブログに関する法整備、組織側の対応とも、十分とは言い難い。故に、「少しでもグレーな部分がある=懲戒処分の可能性あり」と考えるのが妥当だ。職場や仕事内容を書いているブログユーザーは、米国での事件を「対岸の火事だ」と悠長に構えている場合ではない。
それでは、どうすべきか。今考えられる最善の対策は、「職場や仕事のことを書かない」こと。すなわち「触らぬ神に祟りなし」と言ったところだろうか。寂しい限りだがそれが現実のようである。
ブログが爆発的に広がりつつある現在、組織も個人もこれを機会に、ブログに対してのスタンスを真剣に語り合い、早急に固める必要がある。何らかの事態が起こってからでは、もはや遅い。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: ブログにまつわる法律相談室 第2回 ブログによる機密情報漏洩が原因で解雇
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