掲載誌 | 雑誌「アクセス埼玉」(財団法人埼玉県中小企業振興公社) | |
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掲載年月 | 2010年6月 | |
執筆者 | (株)アイドゥ代表取締役井上きよみ(中小企業診断士)、三原崇人 |
Twitter(ツイッター)、iPhone(アイフォーン)をはじめとするスマートフォン。ここ1年の間に大ブレークした代表格ですが、ネットサービスはより使いやすく、より身近になりました。そして、個人の情報発信が益々手軽になってきました。企業規模に関係なく、むしろ中小企業だからこそ、その機動力が十分に活かせる時代となりました。 |
この1年間、喫茶店や電車でiPhone(図表1)を片手にする人を多く見かけるようになりました。携帯電話のようにボタンを押すのではなく、画面に直接タッチして操作しているので、すぐに見分けがつきます。
iPhoneのヒットに続き、4月にはNTTドコモからXperia(エクスペリア)が発売され、「スマートフォン」が急に脚光を浴びてきました。
スマートフォンの明確な定義はありませんが、強いて言えば「電話付きの超小型ネット対応パソコン」が最もわかりやすいでしょう。パソコンですから、OS(オペレーティングシステム)のバージョンアップができ、そのOS上で動くアプリ(ソフト)を利用できます。いわゆる携帯電話ではOSを新しいものにしたいなら、端末自体を新機種に買い替えなければなりません。
またパソコンで利用できるネットサービスを同じように使える点が特徴です。
その一方、現状では、携帯専用サイトを見られない、おサイフケータイを使えない、ワンセグを内蔵していない等といった、携帯電話では当たり前の機能が付いていないデメリットもあります。
iPhoneにはキーボードやボタンがなく、液晶画面に直接、指で触れて操作するタッチパッド方式です。
例えば、1回軽く叩くタップという操作で選択や実行ができ、画面に指を触れて下にスッとなぞるドラッグ操作で画面スクロールができます。指をスッと払えば、フリック操作で、画面が流れて行きます。画面の拡大は、その個所を2本の指で広げるピッチアウト操作、縮小は2本の指をつまみ上げるピッチイン操作でできます。
最初は、わずかな難しさを感じます。が、少し慣れてくると、「直観的操作」とは、まさにこのことだと実感できます。指の動きにサクサクと画面がついてくる、反応の良さにワクワクし、面白くなります。人気が出るのも、うなづけます。
iPhoneはソフトバンクの通信網を利用しているので、携帯電話が利用できるところか、ワイヤレスネットワーク接続エリアならどこでもインターネットが可能です。首都圏であれば、ほぼ場所を選ばず、ストレスなくどこでもインターネットに接続できます。
地下鉄や電車に乗りながら、路線を検索したり、ニュースをチェックしたりできます。ちょっとした待ち時間を有効に活用できそうです。
iPhoneアプリは18万本以上あります。
アプリがヒットすると数百万の収入が見込めるため、個人から企業まで、多種多様なアプリを開発しており、日々アプリが充実しています。
実用的なアプリの代表例は
などです。実用アプリ以外にも、ジョークアプリやゲームアプリなど多種多様で、飽きさせません。価格も無料のものから、百円程度や千円以上のものまで様々です。携帯電話で有料のアプリを利用する感覚に近いです。
例えば、辞書アプリは3千円程度と少々高めですが、今まで電子辞書を持ち歩いていた人にとって、iPhone1台で事足りてしまうなら、安いかもしれません。
また「エバーノート」(後述)のように、パソコンと連動して使えるアプリが多いのも、ビジネスマンにとって「必携ツール」化するゆえんでしょう。
このような特徴を持つiPhoneは、Phoneは、ソフトバンクによる大々的な宣伝効果も大きいでしょう。それまでのスマートフォンが一部のマニア向けイメージだったのに対し、一般向け、つまり普通の人々が使う端末のイメージができあがりました。
さらに、料金設定による2台目需要の掘り起こしという点も見逃せません。実際、多くのiPhone購入者が2台目として使っています。iPhoneの場合、月々5,705円でネット通信が使い放題となります。
現在は、アップルのiPhoneが一人勝ちのスマートフォン市場ですが、そのOSは大別して3つ。他2つは、グーグルのアンドロイド、マイクロソフトのウィンドウズ・フォンで、いずれもネットやパソコンのITガリバーで、今後の動向が気になります。
すでにNTTドコモがXperiaで大攻勢をかけ、確実に国内シェアに切り込んできました(図表2)。世界ではアンドロイド陣営が20%程度のシェアを獲得していると言われ、Googleとの親和性を武器に、この1、2年の間にさらにシェアを伸ばすのは確実でしょう。
マイクロソフトも次期OSとなる「Windows Phone 7」では従来OSを引き継がず、新設計により一新し、巻き返しを図るようです。
つい最近まで、「スマートフォン=iPhone」というイメージでしたが、今後は使い道や料金プランなどを含め、選択肢が増えるでしょう。
また、5月28日にアップルから発売された「iPad」(アイパッド)は、B5判ノートほどのサイズで、今後の動向が楽しみです(図表3)。
OS | iPhone | Android(アンドロイド) | Windows phone | ||
OSメーカー | Apple | Microsoft | |||
携帯会社 | ソフトバンク | NTTドコモ | ソフトバンク | au(KDDI) | au(KDDI) |
機種 | iPhone | Xperia | HTC Desire | IS01 | IS02 |
機種メーカー | Apple | ソニー・エリクソン | HTC | シャープ | 東芝 |
発売 | 発売中 | 発売中 | 発売中 | 2010年6月以降 | 2010年6月以降 |
話題のTwitter(ツイッター)を中心に、ビジネスへの切り口を考えてみましょう。
ツイッターは、「さえづる」という意味の通り、ネット上で気軽に発言できるサービスです(図表4)。無料登録をすれば、すぐに利用できます。
発言の一つ一つを「ツイート」と呼び、1ツイート140文字という制限が特徴です。この制限によって、かえって簡単・気軽に発言できるので、利用者が急増しています。
例えば「人事セミナーなう@ソニックシティビル」という具合に表現に出会います。「なう」は「now」の意味で、今現在の状況や場所を表す俗語です。
ビジネス的なツイートだけでなく、友人同士の携帯メール内容を覗き見しているような内容がやりとりされていたり、人柄が垣間見えて面白いです。
ツイーとは時系列順に表示され、これをタイムライン(TL)と言いますが、興味を引いた他人の発言を自分のTLに表示させるのが「フォロー」という操作で、もう一つの特徴です。反対に自分が他人からフォローされることもあり、フォロー数が増えれば、それだけ自分のツイートを見てくれる人が多くなった証拠です。
「埼玉県内でツイッターをしている人を探すなら「まちツイ 埼玉県ランキング」を見ましょう(図表5)。また、この「まちツイ」では、フォロワー分布マップで、その人をフォローしている人々がどの地域に多いかを、地図で示してくれます(図表6)。」
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ツイッターをビジネス活用するには、次の4つがポイントとなります。
先ほどの埼玉県内のランキングから気になる人を探すなどして、興味のわいた人からフォローしてみましょう。自分からフォローすれば、相手からのフォロー返しが期待できます。
ビジネスで活用とはいえ、発言内容が自社の宣伝ばかりでは相手が興味を持ってくれないので、自分の考えていることや、相手に役立つ情報などを取り混ぜてみましょう。
ブログは一時「ネット版日記帳」とも言われたように、特にWebの知識がなくても自分で内容を更新できるサービスで、数年前から流行しています。無料で開設できるブログサービスが数多くあります。
「SNS」はブログに似ていますが、インターネット上すべての人へ向けてでなく、限られたコミュニティ内への情報発信が主流になります。自社でSNSを運営し顧客を囲い込むツールとしても利用する方法と、「mixi」や「gree」のような大手SNSへ登録して顧客との窓口にする方法で、中小企業では後者が現実的です。
ツイッター、ブログ、SNS(図表7)を組み合わせると、より効果的です。
売上アップに結び付けやすいものは、twitterとブログです。まとまった情報はブログ、簡単な情報は twitterで発信する、SNSはブログと同じ内容を中心に時々裏話のようなものを織り交ぜる、などと簡単な方針を決めておきましょう。
理想をいえば、ブログとツイッターの両方で情報発信できると良いのですが、まだどちらもやっていないなら、まずは気軽に始められるツイッターをお勧めします。
ちなみに当社でも社長ブログ、社長ツイッターを行っていますが、これらを利用して人脈ができたり、お仕事をいただいたりしています。
ツィッター | ブログ | SNS | |
信頼性 | 中 | 高 | 中 |
ビジネス活用 | しやすい | しやすい | しづらい |
手軽さ | 手軽 | 少し難しい | 少し難しい |
画像・動画の掲載 | なし(リンクは可能) | 可能 | 可能 |
文字制限 | 140文字 | なし | なし |
荒れる危険 | 有(他に比べ少ない) | 有 | 有 |
備考 | 1回の更新が短時間で行えるため、更新を継続しやすい。ただし、内容は充実しづらいため、ブランド化はしづらい。 | まとまった内容を書かなければならないため、1回の更新に時間がかかり、継続するのは難しい。継続できれば内容が充実するため、ブランド化できる。 |
今までパソコンと携帯では、利用するネットサービスが異なっていましたが、スマートフォンにより、パソコンでもモバイル端末でも同じサービスを使えるようになってきました。この連携により、ネットサービスの利便性がはるかに高まります。
Evernoteとは、文字、画像や音声などのデジタルデータをネット上に整理して保存できるサービスで、いわば電子版ネタ帳・メモ帳です(図表8)。EvernoteのWebサイトで、無料の会員登録すれば、すぐに利用できます。できれば、ここから専用ソフトをインストールしておけば、より使い勝手がよくなります。
これだけでも十分に使い勝手に優れていますが、さらに便利に思うのは、PCだけでなく、スマートフォンでも利用できて、どの端末からでも同じデータを使える点です。例えば、出先で思いついたことを書いたり、撮影した写真を入れておき、オフィスでゆっくり整理する、といった使い方ができます。
すでに「YouTube」などの無料動画投稿サイトは有名ですが、政府の事業仕分けの中継で、一躍名を知られるようになったのが、無料のライブ中継サービス「ustream」(ユーストリーム)です。ソフトバンクがユーストリームに出資したのを機に、今年4月末より日本語版が開始されました(図表9)。
無料登録をすれば、ライブ配信できるようになります。ライブ配信後、一定期間は何度でも再生できます。今後、スマートフォンからの「お手軽」中継が増えていくでしょう。
例えば、ユーストリームで売り場を中継し、さらにTwitterで集客を促す、という使い方もできます。それをスマートフォンで見た人が、さっそく売り場に足を運んでくるかもしれません。
このようにスマートフォンとネットサービスを掛け合わせることで、今までにはなかった新たな使い方が、どんどん生まれてくるでしょう。
気軽にネットを利用できるからこそ、気をつけるべきがセキュリティです。ネットサービスを会社で利用する場合は、何をどこまでネット上に出すかのラインを決めましょう。
例えば「ツイッターやブログには会社の機密事項や未公開情報を書かない」と言う、当たり前とも思える事柄も必ず文書にしておきます。ただし、文書はシンプルに短くするのが鉄則です。「これだけをしっかり守っていれば、あとは大丈夫なんだなあ」という前向きの意識をスタッフが抱けるようにしましょう。
依然として怖いのがウイルスです。最近猛威を振るったのが「ガンプラー」で、ホームページを改ざんし、閲覧者にウイルスを感染させるものです。ヤフーやJR東日本など大手サイトも被害を受け、話題を呼びました。
私たちが身を守るためには、
をきちんと実施することです。
特にガンプラーでは、Webブラウザの機能を拡張するためのプラグインソフトが狙われました。利用しているプラグインソフトを更新しましょう(図表10)。
また、「Adobe Reader」に関しては、PDFの閲覧には支障がないJavaScriptを停止するのが安全策です。その方法を記します。
名称 |
備考 |
Adobe Reader | バージョン8は削除、バージョン9をインストール。 |
Java | 必要ない旧バージョンを削除してインストール。 |
QuickTime | |
Adobe Flash Player | 「無料のMcAfee? Security Scan Plus (オプション)」の項目は必要なければチェックを外す。 |
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