掲載誌 | 有料メールマガジン「Scan Security Management(2005年度)」 |
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掲載年月 | 2005年6月7日 Vol.109 |
執筆者 | 小松信治(アイドゥ) |
さて、インタビューを行うにあたり、筆者が疑問に思っていた事の1つに、IT 戦略本部との関係がある。内閣総理大臣直属組織であるIT戦略本部内には、情報セキュリティ対策推進会議、情報セキュリティ専門委員会、そして前回述べた情報セキュリティ基本問題委員会と、名称から察するに、内閣官房情報セキュリティセンターと役目が重なるように思える組織が多々存在する。それらの組織との役割分担はどのようになっているのか、山崎氏からは非常にわかりやすい回答をいただくことができた。「IT戦略本部は国家レベルでの意思決定機関、内閣官房情報セキュリティセンターはその意思に沿って業務を行う実行部隊」。頭脳と体の関係にある、そう考えるのがわかりやすい、とのことであった。
内閣官房情報セキュリティセンターでは、段階的に活動を開始しながら、大きく以下の4つの機能を実装することを政策として掲げている。
・情報セキュリティ政策に関する基本戦略の立案
・政府機関の総合対策推進
・政府機関の事案対処支援
・重要インフラの情報セキュリティ対策
ここで言う「段階的に」とは、今年7月に向けて徐々に人員を増強しつつ、活動を開始していくことを意味しており、決して上記の諸機能の整備を漸進的に進めていくと言うわけではない。内閣官房情報セキュリティセンターとしては、それぞれに明確な優先順位はなく、すべてが基本的に同レベルの重要度を持って扱われる。つまり、各機能を動かしつつ、人員を徐々に強化していくということだ。ただし、本連載の第3回で詳細を述べるが、重要インフラのセキュリティ対策については、情報セキュリティ基本問題委員会の第二次提言がつい先日発表されたばかりということもあり、現在は具体策の策定を進めている段階にある。以上を踏まえて、ここからはそれぞれの機能について、特に今年度中に着手、実装を目指す項目を重点的に述べていく。
また、「平成18年度の各省庁の情報セキュリティ関連施策の重点事項」の策定を行うこと、これも内閣官房情報セキュリティセンターの今年度の主要作業として位置づけられている。内閣官房情報セキュリティ対策室時代に行ってきた、各省庁へのセキュリティ指導がより強化される形となる。さらに、内閣官房情報セキュリティセンターとして、積極的に新規政策事案を立案していくことも、目標に掲げられている。
さらに、その政府統一的安全基準(初版)を用いた、政府全体に対する統一的なセキュリティ評価も予定されている。改組前の内閣官房情報セキュリティ対策室時代には、各省庁が作成したセキュリティポリシーの遵守状況の監査が行われていたが、今回は初の統一基準による監査となる。情報セキュリティの世界では、セキュリティレベルが低いところが一ヶ所でもあると、そこからせっかく構築した他のセキュリティまで瓦解してしまうと言われている。今回の統一基準による監査実施は、そういった情報セキュリティの特性を充分把握した上での措置であると言えよう。
情報収集・分析機能の強化に当たっては、関連機関との連携強化はもちろん行っていく。ただし、「内閣官房情報セキュリティセンターとして、単独で情報収集を行うという発想だけではなく、既に様々な民間企業や一部の省庁で整備されている情報収集ネットワークとの連携を図ることが重要」(山崎氏)との考え方から、既に存在している情報網をどう活用するか、そこに主に軸足を置いて活動を行っているとのことであった。つまり、どこでどのようなシステムが稼動しているのか、何かあったときに迅速な情報収集を行うためには、どこにコンタクトを取るのが最も効率が良いのか、そういった情報を把握しておくことで緊急事態に備えようという考え方だ。実際に、その前提に立って、様々なインシデントを研究、分析する作業が進められているとのことだ。
なお、内閣官房情報セキュリティセンターの4番目の機能である「重要インフラの情報セキュリティ対策」については、今年4月22日に公表された情報セキュリティ基本問題委員会の第二次提言に基づいて、現在施策を立案中とのことであった。これについては、次回の記事にて、内閣官房情報セキュリティセンターの今後の活動についてとして触れる。
本連載最終回となる次回は、先ほど述べたとおり、第二次提言から読み取れる重要インフラのセキュリティ対策と、重要インフラを管轄する関係諸省庁との関係について述べる。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)の設置に政府が託すもの 第2回 日本国の国家中枢情報セキュリティ機関、いよいよ活動開始へト
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