掲載誌 | 有料メールマガジン「Scan Security Management(2003年度)(バガボンド)」 今注目のネットワークにまつわる規格・制度をわかりやすく解説! |
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掲載年月 | 2003年9月30日 Vol.028 |
執筆者 | 井上きよみ |
記事の解説 | インシデントのマンスリーレポートとして |
鳥取県の公式Webサイト「とりネット」で、誤って個人情報が掲載され、最長9ヶ月間放置されたままとなっていた。さらに検索サイトのキャッシュに登録され、結果的に個人情報が二次流出してしまった。しかし、現在までに情報流出による被害報告のないのが不幸中の幸いと言えよう。
この事件に関し、発覚からその後の対応を、Webへの情報掲載を担当している鳥取県総務部広報課のコメントを中心にまとめた。
7月31日
8月1日
8月5日
県の内部情報である個人情報が掲載されていたExcel、Wordファイルはいずれも庁内LANのノーツデータベース「県政情報コーナー」(県政記者クラブへ資料提供を行うデータベース)をインターネットで公開しているものであった。
これらのファイルは、以下の段階を経てWebに公開される。
広報課4名のそれぞれの職員には対応部局が割り当てられており、内容審査は1部局1名体制で実施される。その後、課長または課長補佐と協議する。修正指示を出した場合は、該当部局の担当者が指示どおり修正されているかなどを確認した後、Webに公開する。
また、これとは別に鳥取県では、わかりやすい資料提供ができるように「パブリシティ・マニュアル」を独自に作成し、内容審査で用いている。そして、これをもとに教育訓練も実施している。
一見、大した問題はないと感じるチェック体制だが、そこに落とし穴があった。結局、個人情報が掲載されたのは、次のような見落としがあったと考えられている。
掲載したページの性質から、一度公開してしまうと再び担当者が見返すことがない。つまり、公開後のチェック体制がないため、結果的に外部からの指摘があるまで気づかなかったわけである。
広報課にインターネットに精通した職員がおらず、検索サイトへの単純な削除依頼メールにとどまっていた。数日後、サイトの管理者権限で削除依頼できることが判明し、サーバ管理者である財団法人鳥取県情報センターに依頼した。
「県の保有する個人情報の適正な管理の徹底について」という総務部長通知を全職員を対象に発出するとともに、県庁内各会議等で今回の事例を説明し、注意喚起を行った。広報課内でも、再発防止に向け、2つの具体的対策を講じた。
この事件により、鳥取県はgoogleなど検索サイトにキャッシュ情報が残っている段階での記者発表は、情報の二次流出を招きかねないとの教訓を得た。そして、専門的知識を持った職員養成の必要性を強く感じたとも語っている。
個人情報流出が発覚した翌日に、その事実を記者発表し、Webへの謝罪掲載にとどまらず、該当者に対し直接、電話・書面にて告知・謝罪した点は、特に大きく評価できる。
それだけにネットにおける情報の広がりと速度が実社会と決定的に異なる、ネット特有の危険性に着目できなかったことが、かえって事態を大きくしてしまい、残念である。リスク管理における最初の段階、つまり「リスクの洗い出し」から当該事項が抜け落ちていたのだが、その根本はセキュリティに関する知識不足に他ならない。
この重大事件を機に、必要なセキュリティ教育が早急に実施され、問題が問題として認識され、体制として整備されることを期待したい。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 適切な教育訓練が施されていれば個人情報の二次流出は防げたはず 鳥取県公式Web「とりネット」の個人情報流出とその後
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