掲載誌 | 雑誌「アクセスさいたま」(財団法人埼玉県中小企業振興公社) | |
---|---|---|
掲載年月 | 2005年9月(第6回) | |
執筆者 | (株)アイドゥ 代表取締役 井上きよみ (中小企業診断士) |
ブログを従来の一般的なWebページと比較すると、図表1のようにまとめられます。もちろんブログは万能ではありません。そのメリットをどう活かすかが鍵となります。中小企業におけるブログの一番の強みは、運用面での圧倒的なコスト削減とスピーディな更新という一挙両得でしょう。その分、初期コストであるデザインやコンテンツ構成に対し、外部のプロを活用するのは、賢い選択の一つだと思います。
ブログ | 一般のWebページ | |||
新規ページ追加、 更新作業の容易性 |
◎ | Webページに書き込むだけ。 「モブログ」機能が付いていれば、ケータイからの更新も可能。写真も即座にアップできる。 自動的に関連するページのリンクを更新したり、最新情報としてトップページも自動更新できる。 よって、自分たちで簡単に作業できる。 |
△ | ホームページ作成ソフトを使うことが多い。もしくはHTMLと呼ばれる技術をマスターする必要あり。 ブログと同じような自動更新をするには、別途プログラムが必要。 関連ページのリンク更新は、ある程度、ホームページ作成ソフトによって自動更新することはできるが、完全ではない。手作業の場合は、一つ一つリンクを貼り直す。 よって、更新作業をお金を払って外部業者に委託するか、もしくは自分たちの時間・労力を多く消費するか。 |
サイト全体の デザイン容易性 |
○ | テンプレートを利用して、だれでもそこそこの見栄えのページができる。ただし、オリジナルのデザインにするには、知識が必要。 | △× | 無料・有料のテンプレートはあるが、サイト全体に適用するには知識が必要。 |
デザインの柔軟性 | △ | 全てのページがテンプレートを元に構成されるため、レイアウトやデザインが固定化される。 | ◎ | 自由にデザインできるので、凝ったデザインやページごとに異なるレイアウト・デザインが可能。 |
デザイン変更の 容易性 |
◎ | テンプレートを変更することで、サイト全体のデザインを容易に替えられる。 | △× | かなり大変。専門的な知識が必要。 |
サイトの階層構造の 柔軟性 |
○△ | トップ→カテゴリー(分類別)→個別ページの3階層が基本(図表b参照)。各記事は標準として日付順に並ぶ。 構造がわかりやすい分、柔軟性には欠ける。 |
◎ | 柔軟に階層構造を決められる。 |
外部との双方向性 | ◎ | コメント機能が最初から備わっている。 また、「トラックバック」と呼ばれる機能により、相手側ブログから自分側ブログに自動的にリンクを張れる、いわば自動双方向リンクである。 |
△× | 「掲示板」などのプログラムを使用することで、アクセス者とのある程度の双方向性を得ることは可能。 外部ページへリンクした場合、相手側からもリンクしてもらうには、メールなどで相手にお願いする必要がある。 |
更新の通知 | ◎ | RSSという機能(詳細は7月号の本コーナー参照)により、自動的に更新情報が配信される。よって、アクセス者を導きやすい。 | × | RSS配信をできるようにするにはプログラム等を組むことが必要。それができない場合は、メルマガなどで読者にお知らせするしかない。 |
会社のWebサイトをどの程度ブログ化するかということで、
(1)サイト全体をブログ化(全面リニューアル)
(2)一部をブログ化
(3)現在のサイトとは別にブログサイトを持つ
の3つが考えられます。それぞれの場合のメリット・デメリットをおさえ(図表2)、ブログ化の目的やブログ化したいコンテンツ(図表3)と合わせて検討しましょう。
メリット | デメリット | |
サイト全体をブログ化 | ・更新作業がすべて自動化でき、ブログのメリットを最も発揮できる | ・全面リニューアルのため、既存コンテンツの整理、ブログへの移行作業など、リニューアルに向けての作業が大変 |
一部をブログ化 | ・全体への影響が少なく始められる ・自社で更新する部分、外部業者に依頼する部分を明確化できる | ・ブログ化されていない部分は、リンクの修正など更新が自動でできないので、ブログのメリットを発揮しづらい |
本サイトとは別に ブログサイトを持つ | ・本サイトに全く影響なく始められる ・試験的な実施や期間限定サイトなど、用途を明確化して取り組める ・両サイトからアクセスを取り込める | ・本サイトとブログサイトの2つを管理しなければならない ・各サイトの役割をきちんと切り分けないと、両サイトともどっちつかずな状態になる ・アクセスが分散する可能性がある |
業種 | コンテンツ例 |
(全業種共通) | 新着情報 |
メールマガジンのバックナンバー | |
プレスリリース | |
顧客の声 | |
スタッフの声、できごと | |
Q&A | |
社長日記 | |
小売・サービス | 商品・サービスにかかわる周辺知識 |
小売・サービス・製造 | 商品や製品の開発秘話 |
〃 | 商品や製品の活用事例 |
製造業(受注生産) | 製品や住宅など自社製造物の紹介 |
宿泊施設、観光地 | 「今」の状況(季節や行事がわかる内容) |
不動産業、賃貸 | 物件案内 |
病院、施設 | 季節の案内 |
スクール | 生徒の体験談 |
車・バイク・自動車 | ツーリングやイベント情報・報告 |
生鮮食品、花 | 旬の紹介 |
デザイン、設計 | 作品紹介 |
全面ブログ化事例が図表4です。このサイトは有志の集まりである研究会が運営しています。
サイト管理は、年度交替の幹事のうち二~三名が担当します。必ずしもホームページ作成に詳しい人ばかりではなく、結局分かる人に負担がかかっていました。全面ブログ化に踏み切ったことで、だれが担当でも作業できるようになりました。リンクの自動生成・修正により、作業時間が大幅短縮されると共に、リンク切れもなくなりました。さらに各会員が自ら情報を書き込めるようにしたため、管理担当者の手間を減らしつつ、活発な更新が可能となりました。
図表4 (左)トップページ (中)カテゴリページ (右)個別記事ページ (出典:コンピュータ研究会Web) |
更新頻度が低いものも含め、すべてブログの管理画面から更新できるようにするため、従来の目次項目1つにつき1つのブログとしています。また、開催スケジュールは年度ごとにまとめられるよう、各年度をカテゴリとするなど、工夫しました(図表5)。
図表5 図表4の管理側画面 (左)目次項目分の複数ブログを作成した (右)ある目次項目に含まれるエントリー(記事)一覧 |
このようなことから当サイトでは、ブログサービスサイトではなく、ブログ用ソフトウェアとして最も一般的なシックス・アパート社の「MovableType」をインストールして使っています。筆者の会社サイトもブログ化により、雑誌などへの寄稿記事をタイミング良く掲載でき、またスタッフのコラムによって、会社の別の一面を多くの方々に伝えることができるようになりました(図表6)。
図表6 全面ブログ化したアイドゥのWebサイト |
来訪者を増加させるには、ブログポータルサイト等に掲載してもらうことで、自社サイトの存在をより多くの人にアピールすることです。
実は複数のブログ紹介サイト等に自動掲載させる方法があります。無料サービスの「PingLiner」(図表7)です。ブログ特有の機能を利用ため、とても簡単に使えます。
図表7 ping一括送信代理サービス「PingLiner」のWebサイト |
コメント、トラックバック(図表1参照)というブログ特有機能は、生の声や意見を聞き集めるツールとして有力ですが、どう使っていくかは、ビジネス戦略や社内体制との掛け合いとなります。
中には誹謗中傷やデタラメな内容もあるでしょうし、コメントスパムと呼ばれる記事と何ら関係ない内容のコメントや、アダルトサイトや公序良俗に反するサイトへの誘導となるトラックバックスパムも数多くあります。
それらに対し掲載制限をかける機能をブログは持ち合わせていますが、内容を一つ一つ確かめなければならないため、管理者に相当な負担がかかります。また、掲載基準を明確に記載しておかなければ、火種の元にもなりかねません。
Webページ更新の省力化の意味合いが強い場合や受入体制が未整備であれば、コメント、トラックバック共に受け付けないのがよいでしょう。
情報収集的要素が強いなら、きちんと運営管理体制を敷いた上で受け付けるようにします。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第6回 ホームページを楽してイキイキさせる法~新しい情報発信とコミュニケーションツール(ブログ活用その2) ~
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.eyedo.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/122
コメントする