掲載誌 | TACNEWS (TAC株式会社) 受験生活バックアップマガジンです。 |
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掲載年月 | 2000年6月発行 | |
記事解説 | TACは、税理士・公認会計士・中小企業診断士など、ビジネス資格を得ようとする人のためのスクール。東京、大阪を中心に13校。通信教育もやっている。その生徒を中心に配布している月刊誌のトップページに登場させていただいた。 |
井上きよみ (中小企業診断士)  1965年生まれ、岡山県出身。コンサルティング会社、ソフトハウス、メーカーなどを経て、91年に独立。92年、会社設立。現在株式会社ヌーズ・ヌー代表取締社長。コンピュータやネットワークの構築、教育、執筆を手がける。著書に「午後3時のインターネット」(ソフトバンク)等がある。中小企業診断士は、89年に取得。他に販売士1級、情報処理技術者試験、マイクロソフト認定技術者等の資格を持つ。 |
Q.社名の「ヌーズ・ヌー」には、どんな意味があるのですか。
井上 Nou's Nousはnouvelle+nous(新しい私たち)が縮まってできた社名です。私の”新もの好き”が高じてできた会社ですが(笑)、「コンピュータやネットワークで元気になるビジネスを創っていく」という願いが込められています。
Q.中小企業診断士の資格は情報部門だけでなく、商業部門で取られていますが、そもそもの動機は。
井上 3年で販売士の1級を取った時に、大学の先生から「せっかくだから中小企業診断士の資格を目指してみては」と勧められたのがキッカケです。4年生から勉強を始めましたが、それも是が非でも合格したいというのではなく、「就職にも役立つかな」というくらいの軽い気持ちで受けた1次試験に運良く通ってしまって・・・。
Q.2次試験はいかかがでしたか。
井上 1次に受かると思っていなかったので、慌てて勉強しましたが、さすがに勉強不足で落ちました。2次はそれから2年後に受けて合格することができました。大学を出て名古屋のコンサルティング会社に就職したのですが、仕事が忙しいこともあり、1年間は見送ったというか、勉強する時間もなかったのです。
Q.受験勉強はどのような形でされたのですか。
井上 市販のテキストや問題集を使用しての独学です。と言うとカッコよく聞こえるかもしれませんが、最初は貧乏学生でしたし、勤めてからも1年目はお給料が安かったので、専門学校を受講する費用が捻出できないというだけの理由でした(笑)。
Q.ズバリ合格のポイントは。
井上 大学までは学生ですから、いろいろなテストをやっていましたので、テスト慣れしていたことと、社会人2人年目でそれほど実務を知らなかったので、かえって素直に解答できたことではないでしょうか。2次試験では1回目の敗因となった中小企業施策を重点的に勉強しました。私は、もともと文章を書くのが好きでしたので、論述ではそれが幸いしたと思います。また、色々なお店を見た時の第一印象で「この店の商品は売れそうか否か」というのを勘であてるだけではなく、販売士や診断士の勉強で得た知識を元に、店の雰囲気、陳列方法、店員の教育など、様々な観点から自分なりに分析するトレーニングをしたのも良かったと思います。
Q.合格する人とできない人の差は、どのような所にあると思いますか。
井上 私も上京してから、診断士の勉強をしている方と何人かお会いしましたが、試験情報に振り回され過ぎている方が多い印象を持ちましたね。出題委員が替わればその先生の本も読まなければとか、気持ちはわかるのですが、そういうところが合格から遠ざけている気がします。やたらに本を買うよりも、1つの問題に対して自分なりのポリシーを持ってきちんとした答えを書く方が重要だと思います。
Q.現在の業務内容とスタッフ構成を教えてください。
井上 コンピュータ関連の執筆、教育、システム・Web構築がメイン業務です。内部スタッフ(社員)は5名で、その他必要に応じて外部スタッフやアルバイトの協力を仰いでいます。最近では、企業・団体へのコンピュータ・ネットワーク関連の研修が1番多いですね。講師を頼まれることもあれば、教材開発から関わることもあります。NTT及び関連会社、CSKなどが主な受注先ですが、セミナーの規模によって研修用テキストを作り、カリキュラムを組むことになります。私自身の領分はマネジメントとライティングと講師ですが、今は敢えて執筆の割合を減らしているのです。
Q.それはなぜでしょう。
井上 社員を使うとなると当然マネジメント業務が発生しますから、小さいなりにやらなければならないことが色々あって、執筆に集中できないのです。それでも月刊「初歩のパソコン」では新製品紹介やCD-ROMのコーナーを持ったり、埼玉県からの依頼で「アクセスさいたま」という冊子に情報化に関する記事を執筆するなど、何本か連載を抱えています。やはり、執筆を続けるというのは自分たちの広報活動だと思っていますから、今後もこれ以上割合を減らさない程度にやっていくつもりです。
Q.独立されてから現在まで、業務を拡張してきた秘訣は。
井上 1つは”思いきり”だと思います。独立当時はまだ20代で、養う家族がいたわけでもありませんし、万が一に失敗しても失うものは何もないと。それと、最初に入った会社がすぐに傾きかけ、勤めたからといってずっと生活が保証されるわけではないと言うことを、身を持って体験したことも大きかったですね。女性の場合、お茶汲みとコピー取りばかりでなかなかステップアップできないという方も多いと思いますが、そうした不満を抱えて悶々とするよりは、独立して自分が良い仕事をさえすれば、必ず高い評価をしてくれるはずだと、私は考えたのです。売上を伸ばしてこられたのはやはりコンピュータ業界ですから、時流に乗ったことがあると思います。SOHOのような形で仕事をしていますと、どうしてもONとOFFの区別がつきにくく、労働時間が自然と長くなってしまいますので、そのぶん業績も伸びているということでしょうか。
Q.休日のストレス解消法は。
井上 ダイエットとテレビゲーム、エステティックサロンに行くことかな(笑)。ふだんは精神的に疲れることが多いので、気を使わずに済むことが一番ですね。
Q.中小企業診断士を目指している方へメッセージをお願いします。
井上 本気で独立を考えるのであれば、診断士の資格以外に自分の専門分野を持つべきだと思います。よく、「仕事が来たら断らずに何でもやりなさい」と言われる方もいますが、その考え方には私は反対です。「何でもやります」というのはその場限りの勉強にはなっても、本当の意味のキャリアアップにはつながらないと思います。それよりもコアになることを早く見つけ、「自分の強みはここです」とアピールし、それに見合った仕事を続けていくことが必要ではないでしょうか。