掲載誌 | 女性がとりたい!!資格ベストガイド (大栄出版) 女性がとりたい資格ベストカタログです。 |
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掲載年月 | 1993年2月2日発行 | |
記事解説 | 会社設立後、1年くらいして受けたインタビューです。できあがった記事を見て「ミョーに軽い文調だな」と思ったのですが、このくらいの方がきっと読みやすいのでしょう。 |
井上きよみさん (中小企業診断士) |
1965年2月5日生まれ、岡山県出身。経営コンサルティング会社、ソフトウェア会社の勤務を経て、92年に(有)ヌーズ・ヌーを設立、代表取締役に。1級販売士の資格あり。 |
Q.中小企業診断士って、おじさん向けの資格というか、なんかそういうイメージがあるんですが、井上さんはどういうきっかけで診断士の資格を取られたんですか。
A.大学の専攻が商学部だったんです。ゼミは中小企業論でした。3年生の時、就職はゼミ推薦(ゼミの教授を通じて就職)が確定していましたが、運悪く、ゼミの先生がご病気になられ、休職されてしまったのです。困ったなと思って、ほかの先生に相談したら販売士の資格を勧められました。それを1級まで取ったら、今度は中小企業診断士っていう資格もあると。これは、1次、2次、実習とあるんですが、まさか1次に通ると思っていなかったのが合格したので、あわてて2次も勉強しましたが、その時は落ちてしまいました。2次は社会人になってから取ったのです。
Q.実習に出てみて、年上の方ばっかりで驚きませんでしたか。
A.1次の時からそうでしたから、こんなもんかな、と。私は3次の実習は名古屋で受けたんですね。そこでは、3次まで通ってくる女の人は稀だということと、私まだ20代前半だったので、むしろほかの方が驚いたんじゃないかと思います。
Q.この資格の場合、経済の動向とか世の中のトレンドとか、生の情報を把握しておかなくてはいけないので、よく新聞を読むようにといわれていますね。
A.私は日経流通新聞と、あとは一般紙、朝日新聞とかですね、読んだのは。日経新聞を読んだらいいっていわれるんですけど、その言葉に惑わされて、取って購読したんですよ。そしてらすっごいページ数が多いし、難しいんですよ。そのころ学生だったっていうのもあって、全然私の力じゃ読み切れなかったんですね。狭い部屋で新聞にどーんと囲まれてしまって、それで、やめたんです。流通新聞は薄いし、カラーページになってて…これは商業部門を受ける方にはいいと思いますね。鉱工業部門だったら日経産業新聞とか、日刊工業新聞とか、また違いますけど。いっぱいやろうとすると消化不良起こしちゃうから、薄い新聞で頑張ったほうがいいんじゃないかな(笑)。
Q.経営コンサルティングの仕事をするのに男女差っていうのはあるんでしょうか。
A.男女差っていうのはあまりないと思うんですよ。それより私にとっては年の差の方が大きいですね。やっぱり社長さんとか、それなりの年の方ですから、私のような年端もいかない小娘みたいなのがいろいろ言うより、ある程度お年を召した方がアドバイスする方がいかにもっていう感じですよね。
Q.この業界ではあまり若い年で独立すると、経営者の信頼を得るという点で難しいといわれていますね。
A.会社全体を見るっていっても、結局は社長さんが依頼しているわけですから、社長さんの話相手ができるというのが重要なことなんですね。経営者っていうのは立場上、不満が言えませんから、それをコンサルタントにぶつけて話を聞いてもらう。そうなると社長さんと同年代くらいの人じゃないと難しいんですね。ただ、私は社長さんの話相手になることで診断料を払っても、それでその企業がよくなるとは必ずしも思えないんです。かえって社長さんとナァナァになってしまうと、どうかなと思うし。若い人はけっこうキツイことをズバズバっと言うこともありますけど、ナァナァになることはありませんからね。それに、これからその企業を伸ばしていこうという時に、いっしょになって頑張れるというか、長いお付き合いができるというメリットはあると思います。
Q.井上さんご自身のお考えでは、どういう人が診断士に向いていると思われますか。
A.そうですね…新しいもの好きの人が向いているんじゃないですか。お年を召した方って、そういう新しいものを努力して取り込もうとなさってるんですね。それは、いいことなんですが、もっと、特に努力しなくても取り込めるというか。子供の時ってそうですよね。そういう感覚があるかどうかだと思うんです。ウィンドウショッピングが好きな方なんか向いているんじゃないでしょうか。ただ私は商業部門を取りましたので、他の部門になるとまた話は違ってきますけれども。
Q.最初に就職なさった時には1次に通ってらしたんですよね。何か有利になったことってありましたか。
A.私は、全くなかったです(笑)。東京の方とか、あるいはこのごろでは女性を戦力化しようとか、とりあえず口先だけでも(笑)考えられてるようですけど、私が就職した当時、今から6年前になりますが、田舎の方だと女性ってほんとに補助的な仕事しかなかったんですよ。電話しても訪問しても『就職協定を守ってください』の一点張りで、解禁日になって行くと『もう決まりました』っていう…。それでも書類だけは一応お受けしますからと言われて送って、そうしたら資格の欄に販売士とか中小企業診断士とか書いてあるんで、人事部長さんから電話がかかってきた、ということはありましたが。けど、あんまり行きたくない会社だったので…(笑)。それは就職がまだ決まっていないっていうんで、本人の希望とは関係なしに就職部の人が電話してくれた会社だったんです。
Q.東京に出てこられたのは?
A.転勤です。東京って、田舎とは何か全然、違いましたねぇ。世の中が5年は先に進んでいるんじゃないかって思うくらい。開放的な感じがしました。それまでわりと保守的な風土の中にいたんで、資格を取っても企業の方で使い切れなくて夢破れ、みたいな女性も多かったんですね。
Q.女性の方でも経営、マネジメントに興味がある人というのが増えてきていますね。これも変化してきたことかなと思うんですけども。
A.そういう興味を持つ人は、未来、男性も女性もあまり変わらない比率でいると思いますよ。今ではそういう分野は男性がやるという役割分担があって、女性はそこでは力を発揮してはいけないことになっていたんですけど、興味を持つのは男性も女性も同じくらいの数の人がいて当たり前だと思いますね。個人の資質の問題だと思います。
Q.女性診断士のグループがあるとうかがったんですが、そちらはもう活動しているんですか。
A.ええ、それは91年から始まってて、私も幹事をやってたんですよ。ウーマンズ・コンサルティング・ネットワーク”Ami”というんですけども。2ヶ月に1回集まって、講師を招いてその方にお話いただいた後、討論するとか、男性診断士と話合うとか、メンバーのひとりが講師になって後で討論するとか、そういうことを今までやっていたんです。ただの研究会に終わらせず、ビジネスにつなげていきたいと思って、今年はまず第1弾ということで形になるものとして、本を出版しようというプロジェクトが進んでいます。
Q.これから資格をとられた女性は、どういう形で参加できるんでしょうか。
A.最初に、こういう会がありますから参加しませんかという案内状を出して、その存在を知らせるわけです。今年も新しい方が何人か加入されました。
Q.井上さんは92年に会社を設立なさったわけですが、会社名の”ヌーズ・ヌー”はどういう意味なんですか?
A.フランス語で”ヌーベル”っていうのは新しい、”ヌー”は私達という意味なんですが、最初それをくっつけて”ヌーベル・ヌー”にしようかと思ったんです。けど、ヌーベルってけっこうスペルが長ったらしいんですよね。そんなにフランス語にこだわることもないし・・・。ただouの音が入ると響きが柔らかくなる。固い響きにはしたくなかったんです。だから、前半のヌーズは意味はないんですね。スペルはNOUSで同じなんですが、ヌー・ヌーだと言いにくいので途中にアポストロフィを入れたと。意味は特になくて、音の響きと、会社のロゴを作る時、同じスペルが2回あるといいかなと思ってそうしたんです。ちょっとアヤシイ名前にしたかったっていうか、何やっているかわからない感じにしたかったんですね。何々コンサルティングとかってつけてしまうと、仕事を限定してしまうイメージがあるので。
Q.どんなことをやっておられるんですか。
A.コンピュータのシステム開発と経営コンサルティングです。今後はソフトハウスとかメーカーさんの会社の実態に合わせたシステムを提案して、導入指導していきたいと思っています。それは自分ひとりではできませんから、ソフトハウス、メーカー、ディーラーの人達をうまくコーディネートする、コーディネーター的な役割をしながら、システム開発の元になる部分を握っていく仕事ができたらと考えています。
Q.どういう所に仕事の面白さを感じられますか。
A.会社に勤めていると、たとえば副業禁止とか、自分の裁量で動けない部分があります。また自分が一生懸命やっても、会社が保守的な所だと認められにくいものがあるし、ことに女性の場合、出る杭は打たれるみたいなことがありますよね。力のある人が煙たがられて追い出されてしまう。でもこういう仕事は持っている能力を隠さなくていいんですね。いい仕事をすればお客さんにそれだけ喜んでいただけます。